「俺、お前がいねぇとダメ」死んじまう、といつも必死に身を掻き抱かれていたからあの頃は何ぞ二人の情の裂かれるようなことがあればこの男は死んでしまうのだろうと愚かな女子のように信じてしまっていて決して傍を離れぬようにあの血塵の中を生き延びたのだけど現実とはなんと滑稽なものか戦が終わって二人を裂いてしまったのは他ならぬあの男自身であってそれはもう潔く後を振り返ることもなく往ってしまって死にそうな苦悶に泣き喚いたのはこちらばかりだったのに危惧していたようにその鼓動を止めることもなく今日も二人の子供と大きな犬一匹に囲まれて暖かな陽射しの中をそれなりに幸せそうに生き続けてどんどんと穏やかさを増すその銀色を見ると恨みよりも苦笑が胸を満たして独りにされた時の血を吐くような寂しさだとか辛さだとか哀しさだとかは行き場を失っていつしかどこかへ消えてゆくのだろうからどうかあの人もこのまま幸せにしあわせに日々を過ごして生きて生きて生き続けてくれればいいと願う心の裏側の何故だか胸のふかいふかい暗く湿った場所はひっそりと軋むような音をたてながら彼の訃報を待っている。待っている。