熱を帯びてゆく身体を止められぬ。あついあついと嘆いたところであの人は此処には訪わぬと言い聞かせても肢体は頑是無く、歎息。水幕に覆われて揺らぐ視界に映る切なげに震えて起ちあがる因果な骨と桃色に染まりゆく普段は青白いばかりの肌に追い詰められて荒く吐息を漏らす唇も人知れず紅く染まって此処にはいないあの人を誘っているのだろうあの白銀の人。何処もかしこも桃色に染まったこの身体はきっとその色のままに貴方の好きな甘い味がするのですよはやくはやくはやく食べてください食べて欲しいほしいほしい欲しいのに。今となっては望む術も失われたかさついて引っ掻くように肌を愛撫するあの手、の跡を追ってぬめぬめと我が身を味わうかのように稜線を辿ったあの舌、に従って微かな感触にむず痒さを憶えた悪戯な白い髪、とは真逆に痛みを伴っては体内を荒れ狂うあの鉄杭の感触を想う想って想いながら我が手で我が身を慰める。嗚呼しかし体内に潜み込む左手の指の頼りなさも悦楽の拠点を辿って往く右手の技巧の拙さも望むそれとはあんまりにかけ離れ満たされなさに涙ばかりが零れ落つ。ぎんときぎんとき。淫らな桃は瑞々しい頃を行過ぎて熟れに熟れて熟れすぎて耐えられぬほどに甘味を増し最早お前以外に食する人もあるまいよだからだからもう一度戻ってきてはくれまいか白い褥に据えられた桃の頼むから一片の果肉も滴る果汁も残さずにそうまるでそんなもののはじめから存在しなかったかのように食べて味わって咀嚼して消化し尽してそして少しばかりがお前の生きる糧としてその血肉の一片に化す日の訪れたなら俺は。

有り得ないことを夢想しながら独り果てる寝座の上。右の手に受けた自らの白い種を戯れに飲み下してみれば不思議と甘く感じられたのに零れたのは自嘲の笑みでくくく、と漏れたのは哂い声のはずであったのにいつの間にやら嗚咽の音に成り果てる。

お前の生きる糧としてその血肉の一片に化す日の訪れたなら(それは置いて行かれた者のなんという痛快な意趣返しか)俺はそれだけで救われるのに。