怨みつらみをつらつらと、血の気を失った唇の隙間から腐った臓腑のその血肉を吐き出すように吐いて捨てて吐いては捨てて、やがては空になった体の軽やかさに浮かれて果敢なくなってしまえたならばよかったのに。下手に頑丈なのが悪かった。下手に我慢強かったのが不味かった。渦巻く怨嗟を発するのはどこまでも黒く黒く、苦悶を反映したように黒い髪の毛だけというように髪ばかりをただ伸ばして他には何も変わるところも無し。体の線は成長の跡も無く、少年の頃のままに細長い手足を持て余して頼りなく、眉間に蔭の生まれたのが唯一この人間の身の上にも自分と寸刻違わぬ時間の流れが訪れたことを教える。桂。むかしむかしのあの頃のまま真実この国を憂えて盲滅法駆けずりまわり、疲弊する身体に鞭打って未だ孤独に駆けている。遊びに飽いた童どもが一人抜け二人抜け、やがてたった独りになってしまっても頑なに隠れん坊を続ける子供に似ていた。哀れだった。付け込む隙を作りすぎた。自分からその直向さに恐怖して斬り捨てた癖に、今だって肝心の深い所では斬捨て続けているくせに、久方ぶりに目に焼きついた桂の、あってしかるべきである怨みも苦悶も覗かせず、ただただ幼子の母を見るような無垢な好意をあの頃のままに伝えてくる、変わらずに綺麗なままの桂の、愚かしさにいとおしさに切なさに哀れんで欲情して押し倒してその身を陵辱し尽くして。お前は俺を恨んでよい。罵倒して、憎悪して、その手で昂ぶる想いのままに俺を切り刻んでも文句は言えぬ。しかるべき。「すきだ」などとそんな風に柔らかく首筋に口付けを刻みながら心底思っている様に口にするとは哀れにすぎる。酷すぎる。ああ違う。責められるべきはお前じゃ無い。お前は何も悪くない。あの、戦場で数限りなく血を流しては人肌を渇望して独り寝の夜に堪えられずお前の褥を掻き乱し、身勝手にお前を思慕の念に引きずり込んでは行為の咎をはぐらかしていた少年の頃の言い訳を、羞恥も無く、厚顔に、今尚その耳朶に吹き込んでいる、これは俺の所為なんだろう。「愛してる」なんて烏滸がましい寒々しい非常識。虚偽にまみれた腕の中、柔らかく頬を弛緩させる桂の寝顔に高鳴る胸を認める権利すらない。自覚する。我は夜叉の子。ひとでなし。