| 畳のキシリキシリと唸り軋み鳴る寒々しい寝所での睦言はそこに似つかわしくてどこか空々しい。切子硝子の装飾の、美しいのに手にした重みはうすら軽いことによく似ている。二人交わす言霊は言の葉に成り果てて実がない。背後から挑んでもはや幾度目かの揺れる四肢の発する音に紛らわせて囁く、すきだいとおしいしたわしい。虚言。桂が強請ったわけでもなし、声にすればするほどひゅうるりひゅうるりと寒風の吹きすさぶものなら無理に声帯を揺らめかせる必要もないのにまるで縋る藁の免罪符。裏返した銀時の罪悪感。口を割り這い出る言葉は罪業忘却の一役に因って。くだらないくだらない。そうまで思い煩うなら開かねばよい脚なのに。それでも開かされるのは割裂いたその脚の奥、真ん中に息づく慎ましやかな肉の壷の甘さ。慎ましやかなのは上塗りでその実すこぶる狡猾淫靡に獲物を銜え込むことを銀時以外の誰が知るだろうその壷の甘いこと甘いこと。誘われる獲物が罠に嵌まるこのたやすさ。桂に対して、好ましい慕わしいと抱く想いに偽りのあるつもりはなかった。ただ一度落伍別離の道を選んだ前科の身に、桂の思慕思想の一途に突き進むさまはあんまり重すぎる故。受け入れられることを望みながら受け入れることを拒み相対することに恐怖している。あの年若のころ、命の間際の戦場に言葉には出さぬままそれでも濃やかだった二人を銀時はもう忘れてしまった。憶えているのはただ肉体の歓びだけで。ああああさましいあさましい。立ち向かう勇気もないままに繋ぐこの畜生の身をどうして桂は未だ受け入れ続けるのかを銀時は知らない。分からない。言葉の空虚さを見破れぬ愚昧な男でもなし。色の欲に溺れる程肉に恭順な男でもなし。なし。確かめることからも及び腰のまま、今、果てる。揺さぶる腰の、その歓びの種が尽き。固い肉体の唯一まろみを帯びた尻と腿の稜線に肉壷から白い糖蜜の垂れてゆくのをいささか呆然として眺望する。肉のぶつかり合った名残にやや赤く染まり、中心の窄まりも痛々しげに蠢く桂の様を目に入れる。痛々しい。どうして。桂。どうして。紡ぐ偽りの言の葉も失せて陥る罪科の意識に煩悶の渦に沈んでゆく銀時の顔を、独り静かに身繕いを整えた桂が見遣って嘲笑った。「そうやって、俺で苦しむお前の顔が、好きなのだよ」 |