| 不思議なもので物理的肉体の死の淵に佇んでいた昔より平和な街中佇む一軒のあばら家褥の上のたった今現在この瞬間にこそつよく死臭を知るなんて。甘ったるくて生臭いあのアレ、どこからかつよく「わかりますかね」これですよコレ。頭をうずめられる股の合間の感触に桂が大きく息を吸って吐いて達して出された粘液の一滴を舐めてこの臭いが似てる、と言って。いやでも、……ような気がしたけどやっぱり少し違うなどこかに死体でも隠してんの、そんなわけないだろう、じゃあどこから……と、ブツブツ考える素振り。今はそんなこと考えないでくれないか「気のせいだろう」。それよりも早く、腰を揺さぶって催促すれば伸ばされた腕に安心した。そして気付かないで欲しい。もしくは気付いても嫌わないで欲しい。逃げないでくれどうか。どうか。繋がったら、ブワリ、いっそう鼻をついて体が甘い香りの中に沈みこんで抜け出せない抜け出したく抜け出させたくないここは居心地がいい。とても。お互いから臭っているんだよ。分からないかこれは二人の。本当にわからないか。 セックスしたからって、「お前は俺と一緒に往ってくれるわけじゃなし」今更何いってるの。「過古に二人舞い戻るわけでもないし」そうだよ。未来への輝かしい切符、回帰したい過古へのタイムマシンになんてなれない、セックスはセックスであってそれ以上でもそれ以下でもないのだ!「……、もう起ってるのか」うん、もう一回、お願い。「いいよ」いいよ、もう、気持ちがいいならなんだって。ヅラ、お前変わった。いつからそんないけないこという子になったの。いつからかな、俺にもわからん。でも、なんど繰り返したって変わりはしないというのなら気持ちがいいほうが、いいよ。ははは。と笑って銀時は乳首を舐め上げて、桂も、あ、はは、と身を捩じらせて怠惰な心地よさに沈下する。堕落ってきっとこういうものなんだ。汗ばむ体温のここちよさに溺れてばかり、で、気が付いたら穏やかな熱に緩やかに肉は溶かされて漂うこの腐敗臭。甘い臭い。銀時、この臭いは俺たち二人の体から燻っている。 今日はいつもより。すごく。……なに?どうしたのお前、今日すげえ締まるいきそう。……俺、も。内股がビクビクとひきつって終わりが見える。終わった途端にまた始めよう。環状線状ウロボロスのように繋がる行為。ただの行為、その始まりと終わりが問題なのではなくそこに横たわる虚ろさの問題だ。取り巻く世界の何者にも派生せず完璧な自己完結の渦にいる二人の。坂田銀時と桂小太郎の交歓、結んで解いて延々繰り返した一点に留まり続けるその行為。例えばもはや紡がれることの無い時間、永遠に停滞し歩みを止めたままのすべてを死と定義するならこれは死、ここにいるのは幽霊たち。交わりに何の繋がり発展希望も持たない(あるいは持ちたいのかもしれないそれでも持つすべを知らないで)足を持っているのにその動かし方を忘れてしまってちっとも前に進まない。生きてない。暗がりの中の寝座を棺に腐臭が満ちていく生者の世界の中一点の虚ろの地、俺がお前を引きずり込んだか、お前も俺と同じだったか、後者だったならとても嬉しい。たとえそれでどうなるものではないにしろ。離れて一人ずつになれば生きているものも二人という環の中に入ればそこは黄泉の国。二人と言う関係の中で坂田銀時と桂小太郎の死が生まれるところ。 腐敗する骸同士の交尾は果たしてなにも生み出すこともなく紡ぎ出す未来のビジョンも空虚なままなのだけど銀時の桂から立ち去ったあの瞬間に停滞したままのお互いの未練という厄介ものを引き摺りながらあるいはそれに引き摺られながらくねくねとお互いの手と足と舌と舌娶わせて今日も続けられる一回二回「もう一回」それでも足りずに「何度でも」、絡み合う、繰り返す交配、欲深い幽霊たち。 |