時おり生きててもつまんねぇんだろお前、と口にすると曖昧に微笑んだりしていて、ああこいつはマジかも知れないと思って背筋がゾーっと冷めていく時がある。最近じゃ血の気の失せた顔つきをしていて戦場で返り血を浴びた桂を見ると冗談ではなく斬られた死んじまったと確信してわあわあと泣きながら「かつらぁ!」と叫んだら「なんだ」と薄青い唇から声が漏れ出してひどく驚かされる。斬られたばかりの死者のほうがまだしも生き物のなりをしている。きっと疲れている。「紛らわしいんだよテメェ」と怒りに任せてその唇に手ひどく噛み付いてみる。「悪かった」なんて謝りながら桂は痛々しげな顔をする。

毎日のように斬っては血反吐やなんかを浴びていて少々の汚れにも臭いにも慣れているはずだったが、たまに腹いっぱいに飯を食ったばかりらしい奴を斬ってしまうと満々と膨れ上がっていた胃は破裂するように消化しかけていた内容物と胃液と血液とを混ぜ合わせながら周囲に吐き散らす胃酸の痺れるようなきつい臭いと血やら臓物やらの生臭さが一緒くたにされたそれを頭からかぶった日には最悪だった。胃酸で皮膚はちくちくとするし臭いがまるで怨念のようにしぶとく体にしがみついてとれずに悪臭を放ち、腐臭に慣れたはずの仲間だってこればかりは閉口して近づけば後退る。生臭い死臭。だからこの薄暗い狭い座敷部屋で高杉の包帯を桂が換えてやっているのは貧乏くじを引いたからで今日もまた手ひどく斬って浴びて裂いて浴びてしてきたらしい高杉の部屋の中はひどく鼻をつく。「ヅラぁ」なーお前臭くねえの、「別に」ああ、そう。静かな部屋。障子の薄い紙から漏れる光はひどく弱く、桂の白い肌はますますもって青白い。手に持つ包帯すらそれを映して薄青く目に焼きつく。 「くせぇんならこっから出てけよ。なんでいるんだ手前ェは」 苛立つ高杉の声はいつも甲高く歪んでいる。あちこちが強い胃酸に微かに溶かされて点々と赤く傷ついた小さな顔。「うるせぇよ」言われなくとも俺はここを出てゆく。ここはもう狂っている。俺はこっから抜け出して遠くとおくどこかへ行くつもり、で立ち上がると何かを察したらしい桂の青い顔が俺を振り仰いだ。「銀時、」と囁く下唇だけが妙に赤く膨れているのは昨晩に俺がひどく噛み付いたせいで唇の脆い粘膜は立てられた歯にすぐに傷ついて血を流した。血の味のキス。「いや、なんでもない」ああそう、じゃあ「俺行くから」 締め切られた戸を背後に、高杉と桂の何事かを言い合う声が聞える。外の空気は冷たく、ふと昨夜の桂の血の温度がキスが恋しくなったがそれも踏みしめる土の上に数歩足を進めればいさかう声も思いもやがては消えて、しかしあの部屋の死臭だけは身体に染み付いてしまったようになかなか落ちないで往生する。