発砲音。深夜1時45分に不条理な暴力で街角を支配した。吐き出される白い煙の向うに、ひた、としている眸の中が憎しみと憤りと憐憫と軽蔑、いつくしみと苦悶とを見せ付けるのだからこの男は狂犬にもほど遠い。今、熱く煮える脇腹を食い破った弾丸の行く末を知らない。血が赤い。陳腐だ。うずくまるおれの銃創を癒やそうか/抉ろうかと揺れ動く指先の幼稚さを笑おう。少し寒い。分かり易い後悔がひどくかわいいね。手に入らないものを、手に入らなかったものばかりを追い続けているはお互い様で、傷を舐めあうようにこうやって足を引っ張り合っている。滑稽劇は止む切っ掛けもなく、際限も無く、延々と続くので「土方」いまここで終わるよ。血の色が氾濫して最早黒。沈黙を強制する夜の中で俺は呼吸を止めたので、続く絶叫と二発目の弾丸の行方を聞きもせず、見もせずに。