白い肌は甘いのだと手前勝手に思っていて、実際に歯を沈めてみれば憾みやら憎悪やらの黒黒と苦いものばかりを詰め込んでこの男は生きているのだった。どこか遠くから犬の遠吠えが長く尾を引いて夜を貫き、ひっそりと暗い寝所に重なった二人の鼓膜を刺す。以来静かだなあと思って耳をそばだてれば土方の胡坐を掻いた真ん中で、桂の立てる水音だけがちゅるちゅると鳴っている。 喉の奥まで押し込んで、たまに歯を立てる。口の中の物体の感触を楽しむように舐め転がす桂の口腔の動きは散漫で、思ったよりも効果は得られない。集中しろよ、と声を掛けると、くくく、と笑うように肩を揺らして顔を上げてきた。夜に浮かぶ白い顔がニヤニヤと笑いながら土方の鼻先に口づける。あまり好いようではないな。なだめるような指先が土方の体を辿っていく。肩から胸元、そして先ほどまで顔を埋めていた股間まで、白く長い指が爪を立てながら滑り降りていったので、朝、陽の元で見たならきっと赤く痕を残しているだろう。ひく、と身動ぎすれば桂の唇がなだめるように肌に降った。遊ばれているなと思う。 見遣れば、土方を玩ぶばかりでまだろくろく愛されていないはずの桂の体がそれでも濡れていた。内側から静かにくすぶり始めているようで、青白い皮膚が熱い。兆しをあらわにした身体が土方にぴったりと寄り添う。汗で湿る皮膚と皮膚はあまりにも滑らかだ。土方の腕が桂の背中に回され、その背骨を一つ一つ、模るようになぞっていくと鼻先から抜けるような溜息を漏らした。そのまま伝い降り、尻たぶの真ん中へ指先を滑り込ませる。望むところへ誘い込もうとしているようで、細い腰が揺れる。桂のすでに発熱している性器が土方の腹に擦り付けられて、そこをわずかに濡らした。 「裏切」より抜粋//『よんでるふりむくおちる』 |