できごころで3Z
夏の気配ももうすっかりと姿を失って近づいてきたのは冬の匂い。日の陰る頃ががずれてずれて早くなり早くなり未だ夏の記憶を保つ頭にはこの夕闇の示す時刻が検討つかない今は午後の5時くらいだろうか。壊れた教室の時計はずっと2時04分を指し示したままで今桂を待たせたままもう何十分姿を見せない銀髪の担任教師は、直さなきゃなー、いやでもめんどくせぇなー、とそれを見るにつけけだるげに口をそう動かすのだけど直されないままもう5日を過ぎているから今は一体何時なのだかを知るために慣性で時計を振り向けども目に映るのは薄闇に見当違いの2時04分。窓の外、校舎の道路を挟んで向こうに見えるビデオレンタル店が安っぽい蛍光灯の明かりに店内を染めるのを見てようやく正しい時刻を知る。ああ今は午後の6時なんだ。おじさん一人が切り盛りするあそこはいつもこの時刻に店を開けて午前3時に店を閉める。一度だけ独り入ったあの店にはあんまり新しい品は入ってなくてあるのは今となっては知る人もすくない名画ばかりの『カンタベリー物語』だとか『キングオブキングス』だとかそういった色あせたパッケージたちが棚には鎮座していた。桂にはどんなものか判らないし格別の興味を持たせはしないものばかりだったのだけど多少なり、本当に多少なりそれはこれから向かう安アパートの布団の上に桂と男が寝転がるまでのなんともいえないあの空気、お互いが無言のうちに時が経つのを耐える居心地の悪いあの空気を紛らわせてくれるんじゃないかという期待のうちに適当な一本を借りて彼の部屋に上がりこんだ。タイトル『O嬢の物語』のあやまち。「なにコレお前僕実はこんな風にされたいんですとか言う遠回しなお願いのつもりですかコレは」と軽口を叩きながら実は少なからず興奮してしまったらしい銀八はその映画の終わりを待つことなく布団までの移動も口惜しくその場のフローリングの冷たい床の上に桂の肩を押し付けての横暴。前戯もそこそこいつもより少し堅いままだった桂の体は痛みを伴いながら貫かれた上に「こういうの、どう?」と映画に感化されたらしい銀八が獣みたいに後ろから穿っている利を活かして入れたまま尻をピシリピシリと引っぱたいてきたものだからもちろん痛いし尻を揺らされるたび中の銀八のを意識してしまうし感じてしまうしで「い、イタ…嫌、だめ、だめ、ダメ…!」と息も切れ切れ必死に頼んだのに「イイみたいだよな、叩くたびにすっげえ締まってるよ、分かる?」なんて言ってますます叩かれた桂の尻は翌日にはひどく腫れて情けなくって泣けてきて困った。それ以来桂はあの店に行かないだって無闇に落ち着かなくなるから。